不要な空き家を所有していて処分したいけれど「売却方法が分からない」「古い空き家だから売れるか心配」と放置している方もいるのではないでしょうか。
住居は築年数が経つほど価値が下がっていくだけでなく、維持費を払い続ける負担や近隣住民への迷惑といったリスクも発生します。
そのため、「空き家を売りたい、手放したい」という方は早めに売却するのがおすすめです。
そこで今回は空き家売却について、以下の内容で紹介します。
▼この記事に書いてあること
その他、空き家の売却でかかる税金や空き家が売れないときの対処法まで、気になる疑問について徹底解説します。
空き家を売りたい&手放したいなら早めに売却
空き家を売りたいと思ったのなら早めに売却するのがおすすめです。
活用していない空き家を所有していると、以下のようなリスクが発生します。
- 固定資産税や管理費などの維持費がかかる
- 近隣住民の迷惑になる(害虫/景観の悪化/草木の隣地への越境など)
- 倒壊の危険など心理的負担
建物は定期的に換気や通水をしないと傷んでしまいます。
放置している期間が長いと売却する際に価値が下がってしまったり売却に向けた修繕の必要があったりといったデメリットもあるので、不要な空き家は早めに売却しましょう。
空き家の売却方法|売る手段と相談先はどうすればいい?
空き家を売却する際におすすめな手段、相談先がこちらです。
それぞれ詳しく紹介します。
①そのまま売却
まずおすすめなのが、空き家を解体せずそのまま売却する方法。
明確な決まりはありませんが、家は築20年を過ぎると「古家」と呼ばれ、建物としての価値はゼロに近くなることが多いです。
そのため、築20年以内なら「中古住宅」として、築20年以上なら「古家付き土地」として売却するのがおすすめです。
売り方 | 理由 |
---|---|
中古住宅 | 延床面積や立地などが同条件の新築住宅より安い ⇒予算を抑えたい人に需要あり |
古家付き土地 | 築20年以上でリフォームなしの家だと 買い手が見つかりにくい ⇒土地をメインとして販売すれば、 建物を自分でリフォームして使いたい人や その土地が欲しい人に需要あり |
中古住宅か古家付き土地のどちらとして販売するのが適しているかは家の状態や諸条件によって異なり、自分で判断するのは難しいです。
まずは不動産会社に相談して販売方針を決めると良いでしょう。
②解体後に売却
2つ目は建物を解体してから売却する方法です。
解体後に売却するメリットとしては以下が挙げられます。
- 古家付き土地より早く買い手が見つかる可能性あり
- 更地にすれば建物の維持管理費用がかからない
- 新築住宅の建築など、幅広い用途で購入希望者にアプローチできる
また、解体後に売却する際の注意点がこちらです。
- 再建築不可の土地ではないか確認する
⇒再建築不可の土地では家の取り壊し後に建物を建築できないので、土地の価格が下がる - 建物付きと比較して更地は土地にかかる固定資産税が3~6倍ほど高額になる
- 解体費用がかかる
解体費用についてはこちらの項目で詳しくまとめているので、参考にしてくださいね。
③買取業者に売る
買取とは仲介による売買ではなく、不動産会社に直接物件を買い取ってもらうことを指します。
買取業者に売ることのメリット・デメリットがこちらです。
メリット | ・最短1週間ほどで売却できる ・内覧対応の必要なし ・仲介手数料/解体費用が不要 |
---|---|
デメリット | ・売却価格は相場の6割~8割前後に減る傾向 ・条件によっては買取してもらえないことも |
買取業者を利用することの最大のメリットはスピーディーに取引できること。
業者によっては1ヶ月以内に現金決済まで済む場合もあります。
そのため、買取業者への売却はとにかく早く空き家を処分したい方や内覧対応などの手間を省きたい方におすすめです。
空き家の売却にかかる費用
空き家の売却には以下のような費用がかかるのが一般的です。
一つずつ解説していきます。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に物件の売却を依頼して売買契約が成立した際に不動産会社に支払う報酬のこと。
仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で以下のように定められています。
売却価格(税別) | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売却価格×5% |
200万円超え、400万円未満 | 売却価格×4%+2万円 |
400万円以上 | 売却価格×3%+6万円 |
例えば売却価格が500万円の場合、
仲介手数料=500万円×3%+6万円=21万円(税別)
となります。
なお、400万円未満の物件の場合は「低廉な空家等の売買取引における媒介報酬額の特例」が適用され、仲介手数料に調査費用や人件費などを足した18万円(税別)が報酬上限となります。
解体費用
空き家を解体して更地にしてから売却する場合には解体費用がかかります。
解体費用の目安を以下にまとめました。
建物構造 | 1坪あたりの費用 |
---|---|
木造 | 4万円前後 |
鉄骨造 | 6万円前後 |
鉄筋コンクリート造 | 7万円前後 |
上記のほか、庭木の伐採などがある場合は追加で費用が発生する可能性があります。
また、自治体によっては空き家の解体に補助金を出しているところもあるので、空き家が所在する場所の管轄の役所に確認しましょう。
整理・片付け費用|荷物をそのままにするのはNG?
家具や荷物が残っていたり掃除の必要がある空き家の場合は以下のような片付け費用がかかります。
- 粗大ごみの処理券代
- 不用品回収業者の引取り料
- 清掃業者の報酬
残置物のある状態での売却自体は法的問題はありません。
しかし、家財道具が残っていると、すぐに売れる状態ではないと不動産会社に判断されて積極的に販売活動をしてもらえなかったり、引き渡し後にトラブルが起こる可能性もあります。
そのため、物件の引き渡しまでに荷物は処分するのが基本です。
空き家の売却でかかる税金
空き家の売却でかかる主な税金や関係する費用をまとめました。
税金 | 概要 |
---|---|
譲渡所得税 | ・不動産を売却した際に売却益があると 課せられる税金 ・譲渡所得 = 売却価格-取得費用-譲渡費用 |
相続登記費用 | ①書類の取得費…数千円ほど ②登録免許税…固定資産税評価額の0.4% ③司法書士への依頼料…5~10万円ほど |
印紙税 | 売買契約書(課税文書)の作成に際して 記載金額(売買代金)を基準に 課税される国税 |
なお、譲渡所得税の課税所得税額は以下のように計算します。
所得の種類(不動産の保有期間) | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得(5年以内) | 30.63% | 9% | 0.315% | 20.315% |
長期譲渡所得(5年超) | 15.315% | 5% | 0.63% | 39.63% |
税率は空き家を所有してから5年を基準として変動し、長期譲渡所得のほうが20%ほど税額が安くなります。
空き家売却の税金控除&補助金は?
空き家を売却する際には税金やその他費用がかかりますが、これらの費用を抑えるコツがあります。
空き家売却で適用できる税金控除や補助金の一例がこちらです。
税金控除/補助金 | 概要 |
---|---|
解体費用の補助金 | 自治体による解体費用の補助金制度 金額に差があり、最高100万円ほど支給 |
相続空き家の3000万円特別控除 | 譲渡所得のうち最高3000万円が控除される 適用条件が厳しい |
それぞれ詳しく紹介します。
解体費用の補助金
自治体の中には空き家の解体費用の補助金を支給しているところもあります。
空き家解体の補助金は最高100万円ほどで、自治体によって金額に大きな差があるため注意が必要です。
補助金を受給するための条件も自治体によって異なるので、詳細は空き家が所在する管轄の役所窓口やホームページで確認しましょう。
相続の空き家特例|3000万円控除
相続した不動産を売却した際に売却益があると譲渡所得税が課せられます。
しかし、一定の要件を満たすと「相続空き家の3000万円特別控除」が適用されます。
つまり、譲渡所得のうち最高3000万円が控除されて節税できるということです。
この特例を適用する際の計算式がこちらです。
- 昭和56年5月31日までに建てられた一戸建てで、現行の耐震基準を満たしている
- 売却額が1億円未満
- 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売却する
- 相続開始の直前までに被相続人(親など)以外に住んでいた人がいない
- 相続開始の日から3年後の12月31日までに売却する
上記の他にも細かな条件が設けられているため、相続空き家の3000万円特別控除を適用するのはかなりハードルが高いと言えるでしょう。
空き家を買取業者に売却した時の相場
空き家を買取業者に売却する際の相場は仲介の6割~8割ほど。
空き家買取業者は物件を買い取った後に再販するために解体やリフォーム、ハウスクリーニングをします。
再販に向けたこれらの費用を差し引くため、一般的な売却価格より安くなります。
そのため、仲介でも買い手が見つかる物件で売却を急いでいないのであれば、仲介で買い手を探してもらうのがおすすめです。
しかし、「建物の老朽化が進んでいて解体が必須だけど解体費用が出せない」という方や「売却価格が下がっても早急に空き家を処分したい」という方には買取業者を利用するのも一つの手です。
空き家売却の流れ
空き家売却の大まかな流れがこちらです。
- 不動産会社に売却の相談をする
- 物件調査、価格査定
- 不動産会社と媒介契約を締結する
- 売却活動の開始
- 買主と売買契約を締結する(ここで手付金受領が一般的)
- 物件の引き渡し(残代金受領)
中古住宅の売却では、売却活動の開始から売買契約の締結までに3ヶ月ほどかかるのが一般的です。
しかし、古い空き家の場合は購入希望者が現れるまでに3ヶ月以上かかることも珍しくありません。
また、売買契約を締結してから物件の引き渡しをするまで1~3ヶ月ほど要するケースが多いので、スケジュールに余裕を持って売却活動をするようにしましょう。
空き家売却の注意点
空き家を売却する際は以下の点に注意しましょう。
- 空き家の名義変更(=所有者移転登記)を忘れずにする
- 最初の価格設定は高めに設定する
- スケジュールに余裕を持って売却活動をする
- 解体する場合はタイミングに気をつける
- 空き家を売却したら確定申告が必要
不動産を売却できるのは名義人本人だけなので、空き家の名義変更が正しくできているか確認するのがポイントです。
また、買主は値下げ交渉をするケースが多いため、価格は高めに設定しておくと損をせず取引ができるでしょう。
解体のタイミングと確定申告については次の項目で解説します。
解体する場合はタイミングに気をつける
空き家を解体する場合は1月1日以降に行うのがポイントです。
空き家でも土地上に住宅があれば「住宅用地の軽減」が適用され、その年の1年間は固定資産税が安くなります。
固定資産税は毎年1月1日時点の土地の状態で判断されるため、年末に建物を解体してしまうと1年間軽減の適用を受けられないことになってしまいます。
空き家を売却したら確定申告が必要
空き家を売却して利益が出た場合、利益に対して譲渡所得税が課せられるため、確定申告が必要となります。
確定申告は空き家を売却した翌年の2月16日から3月15日までに行います。
売却による利益がない、または損益が発生した場合は確定申告をしなくても問題ありません。
しかし、確定申告をすると税金控除や補助金を受けられるといったメリットもあるので、よく検討しましょう。
空き家が売れない場合の対処方法
不要な空き家を長期間所有することには様々なデメリットが付いて回ります。
そのため、不要な空き家は早めに処分するのがおすすめですが、立地や建物の状態によってはなかなか買い手が見つからないこともあるでしょう。
空き家が売れない場合は以下の方法で処分するのがおすすめです。
- 建物を解体して更地にして売り出す
- 最低限のリフォームをする
- 空き家買取業者に直接売却する
- 仲介している不動産会社を変える
- 空き家バンクに登録する
- 無償で譲渡する
古い空き家の場合は購入後に買主がリフォームをしたり、既存の建物を取り壊して新築するケースがあります。
この場合だと買主の費用面での負担が大きいため、更地するか引き渡し後そのまま住める状態までリフォームしなければ売れ残ってしまうことも。
また、仲介では売れなかった物件も実績の豊富な買取業者なら買い取ってくれるケースが多々あります。
空き家買取はプロを相手にスピーディーな取引ができるので、売れない空き家があって困っている方は検討してみてくださいね。
まとめ
今回は以下の内容で紹介しました。
- 維持費や近隣住民への迷惑などの観点から、不要な空き家は早めの売却がおすすめ
- 空き家はそのまま売却、解体後に売却、買取業者での売却で処分できる
- 空き家売却には仲介手数料、解体費用、片付け費用がかかる
- 空き家売却の控除や解体費用の補助金制度は要チェック
- スケジュールに余裕を持って売却活動をする
空き家を売却する際はそのまま売却するにせよ解体後に売却するにせよ費用がかかります。
少しでもご自身の負担額を減らすためには、特別控除や解体補助金などの制度で適用できるものがないか確認することが重要です。
また、売却活動を開始してから引き渡しが完了するまで3ヶ月はかかるのが一般的なので、スケジュールに余裕を持って売却活動をするのもポイント。
ぜひこの記事を空き家処分や空き家に関する節税の情報集めとして活用してくださいね。
コメント